前回のあらすじ
日本人女性は容姿を褒められた際の反応として、多くの場合謙遜を選ぶ。
それは自身の美しさへの無自覚ゆえではなく、「あなたは美しい」との声を受け入れることの代償(同性から嫌われる等)があまりにも大きいことを知っているからであると暮山は考察する。
しかし暮山は数年前、この常識を覆す事態を目の当たりにしている。
あまりの衝撃に、その記憶は数年経過した今でも鮮明なのである。
(前回の記事はこちら→ 美と暮山① )
暮山、出会う
あれは数年前、暮山がここ中東某国で英語教室に通い始めて半年ほど経過したころでした。
外国の人の価値観が日本の世間一般のそれとは随分と違う(※)ことが理解でき、英会話にも慣れてきた暮山は教室で出会った何人かと友人になることができました。
(※関連記事 英語と暮山① )
特に親しくしていたのは、暮山のひとつ年上のイタリア人・ソフィアと、10歳ほど年上で同じマンションに住んでいたブラジル人・ルイーザです。
二人とは英語学校がない日にも一緒に出かけてランチやお茶をしたり、お互いの家を行き来したりしていました。
その日も英語学校の後、暮山とルイーザの住んでいたマンションのすぐ近くのレストランで会う約束をしていました。
ソフィアが新しく知り合った、やはりイタリア人の女性がわれわれのマンションに引っ越してきたばかりということで、四人で会うことになったのです。
名前はアンジェラ。
高級ブランドの化粧品広告モデルのようなその容姿に、暮山は息を呑みました。
う…美しい…!!!
中東某国には色々な国の人が暮らしているため、中にはその美しい髪や顔を隠さずに生活するアラブ人の女性もいますし、欧米人も多く見られます。
そのため暮山も、日本人とはまた違う圧倒的に華やかで美しい女性たちを見慣れてきてはいましたが、アンジェラはその中でも目立って美しく見えました。
彫りが深く整った顔立ち。
その顔立ちによく似合う、金色がかった薄茶色の髪。
そして人形のように長い手足と小さな顔…。
アンジェラのあらゆる外見的魅力が、一般的な黄色人種である暮山の劣等感をまぶしく照らします。
圧倒的な美しさにただただ気圧される無力な暮山は、またしてもいつの間にか秘儀・ヘラヘラ笑い(※)を発動させておりました。
(※関連記事 英語と暮山② )
さらにアンジェラ、高校〜大学時代はアメリカで過ごしたとかで、完璧なネイティブ発音のアメリカン・イングリッシュで話します。
同じ外国の人といっても、ソフィアやルイーザのような、暮山と同じ英語勉強中の人の話す英語とは全く違います。
ペラペラと高速で淀みなく発音されるアメリカン・イングリッシュは、授業中にネイティブの先生が生徒たちに分かりやすいようにと話してくれる英語とも全く違うのです。
暮山の英語能力では、脳を最高速度で回転させても3割くらいは理解できない部分が出てしまい、会話についていくのが困難です。
…せっかく紹介してもらったけど、残念ながらこの子とはそこまで仲良くなれそうにないな…。
相変わらずのヘラヘラ笑い&脳の高速回転をしながら、暮山はこう思い始めていました。
圧倒的に美しい上、英語までネイティブと同じようにペラペラと話せるイタリア人。
一方で暮山は、容姿について特筆すべき点をもたぬ英語勉強中の日本人。
(しかも後から分かったことには、アンジェラの旦那さんはフランス人で、彼女自身もフランスで働いていたことがあるためフランス語までペラペラだそうです。)
アンジェラからしたら、暮山から得られるものなど特に何もなさそうです。
おまけに暮山とは英語力のレベルが違いすぎて、ソフィアやルイーザがいないと会話も成り立たなそうに思えます。
そんなことを考えていた時、ルイーザがアンジェラに
アンジェラって美人だね!
と、例の褒め言葉を口にしたのです。
こんなに文句なしに美しい人でも、
「そんなことないよ〜」
って言うのかな…。
まぁ大人だからそう言うんだろうな…。
暮山はそんな風に思いながら反応を待ちましたが、アンジェラの反応は暮山の予想に反するものでした。
アンジェラは
それが何か?
と言うような余裕の表情を浮かべてルイーザの賞賛を受け入れたのです。
暮山にとって完全に予想外の反応でした。
そして思ったのです。
え……?何この人…
面白い!!
やっぱり仲良くなりたい…!!
と。
(次回に続きます。)
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