前回までのあらすじ
運転の才能から見放されている暮山は、車社会のここ中東某国でも事故を起こすのを恐れ運転しない主義を貫く。
そんな暮山の移動手段はタクシーもしくは公共交通機関だが、暮山は圧倒的に公共交通機関を好む。
女性専用空間に陣取り、世界各国からやってきた様々ないでたちの女性たちが同じ空間にいるカラフルな日常風景を眺めるのが大好きなのだ。
ある日、いつものようにぼーっとしながら乗り物に揺られている暮山の正面に、アラブ人の美人さんがやってくる。
そこで何気なく彼女の横顔を目にした暮山が圧倒されたものとは一体何なのか…?
(「美と暮山サイドストーリー編」初回記事はこちら→ 美と暮山 サイドストーリー① )
(前回の記事はこちら→ 美と暮山 サイドストーリー② )
(「他人暮山編」本編はこちらから→ 美と暮山① )
Eラインと暮山
みなさんはEラインという言葉をご存知でしょうか。
正式名称はエステティックライン。
暮山は和製英語かと思っていましたが、どうやら英語でもEsthetic lineと言うようです。
Eラインというのは顔を横から見て、鼻の先端と顎先を結んだ直線のことです。
この鼻の先端と顎先の間には口があるわけですが、この口がEラインより内側にあるのが理想とされ、いわば美人かどうかの判断基準のひとつとなっているようです。
(そういったわけで、Eラインという言葉は美容整形や歯列矯正の分野で使われることが多いようです。)
暮山がこの言葉を知ったのはうら若き二十代の頃のこと。
テレビで紹介されたこの単語を聞き、暮山も自分のEラインがどういった様子なのか計測してみることにしました。
鼻先に定規を当てて、もう一方の先端を顎先に近づけて…
近づけ…て……?
………顎先って、どこ……??
定規は鼻先と口に触れるばかりで、顎先まで届くことはありませんでした。
というより、暮山の顎は丸く長さも足りないので、どうやら顎先と呼べるポイントがなさそうです。
図にするとこんなイメージです↓
図:暮山の横顔
当時の暮山は思いました。
Eラインの内側に口があるなんて、自分の横顔を見る限り想像もできない!
そんなこと、人間の顔でありえるんだろうか?
Eラインの外側に口がある=暮山の顔は理想的な美人の基準内にはないということです。
つまり、美人ではない側=人類の圧倒的多数派に属する人間であるというだけの話ですね。
今思うと、当時の暮山はただその事実を正面から認めることができなかったのでしょう。
というより、ただ認めたくなかった。
きっと、自分自身も人様から美しいと言われるような女性に仲間入りできる可能性がほしかったのです。
このころは暮山も二十代、乙女だったのですね。
若者というのは実に悩み多き世界で生きているものです。
…少々脱線しましたが、そんなわけで暮山、それ以来自分にとって都合の悪い存在であるEラインという言葉をすっかり忘れて生きておりました。
精神衛生上よろしくない都合の悪い事実に出会った時は、すかさずフタをして決して開けないよう押入れの隅に追いやってしまうことが快適な人生を送る鍵です。
しかしたった今、暮山の意思に反し押入れの隅からEラインのツボが転がり出て、フタが開いてしまいました。
どうやら鼻が高くて美しい美人さんの横顔のインパクトによって、暮山の脳内で地殻変動が起こったようです。
美人さんの横顔は暮山のそれとは全く違うフォルムをしていました。
美しい口元が綺麗にEラインの中に収まっています。
こちらも図にしてみましたのでご覧ください↓
図:美人さんの横顔
美人さんは鼻が高く顎もシャープなので、Eライン基準は余裕でクリアしていることになります。
美と暮山
日本人にもEライン基準をクリアされている美しい方というのはたくさんいらっしゃるものと思われます。
テレビや映画で活躍されている美しい女優さんたちの多くが当てはまりそうですし、一般人の美しい方もきっと当てはまるのでしょう。
少し調べてみたところ、どうやら日本人の場合はEライン上に唇が乗るのが理想的なフォルムとされているようですね。
おそらく、全体の傾向として欧米人やアラブ人のように鼻が高い方がごく少数であるためなのでしょう。
それぞれの国や民族としての好みの問題もありそうです。
Eラインに唇が乗る程度で美人の仲間入りというのなら、暮山だって美人と言えなくも……ない!!
言えなく…も……言えなくもなくも………言え…なくも……なくも………
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いえ、やはりそうは言えませんね。
すみません、暮山、三十代になってなお乙女なもので。
年を重ねて多少は分別を身につけましたが、やはり美しくありたいと願ってしまう美のとりこですので。
十代や二十代の頃よりは、自分自身の容姿についてずっと良く理解しているのです。
美人とは言えない上に悲しいかな、最近では年齢を感じるようなことも出てきてしまったけれど、暮山は今の自分の顔が気に入っています。
ただそれでも、あわよくば少しでも美しくありたい、美しくなりたい。
きっとこれからいくら年を重ねようとも、十分な分別を身につけようとも、暮山は女性である限りずっと美のとりこであり続けるのだと思います。
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