前回までのあらすじ
中東某国に来て数ヶ月、英語教室に通うことにした暮山。
意気揚々と広い世界に飛び出したものの、そこはこれまで海外生活の経験のない暮山にとっては未知の世界。
授業がすべて英語で行われることにも、同じ中級レベルのクラスにいるほかの生徒たちの高い英会話力にも圧倒されてしまい、初対面の緊張もありヘラヘラ笑いを浮かべつつも授業内容についていくので精一杯の暮山。
さらに手をあげずに発言する・他の人の話を遮って発言する等のクラスメイトの行動にカルチャーショックを受け、暮山の脳はパンク寸前に陥る。
毅然とクラスメイトに注意する自分を妄想しつつ、実際にはヘラヘラ笑いを顔に貼り付けたまま、おとなしく座っていることしかできないのであった。
(「英語と暮山編」の初回記事はこちら→ 英語と暮山① )
(前回の記事はこちら→ 英語と暮山② )
暮山、慣れる
カルチャーショックは受けたものの、その後も暮山は意外にも楽しく英語教室に通い続けていました。
まだみんなのようにポンポンと英語で言いたいことを口にすることはできませんが、少なくともすべての会話内容が英語という環境には2週間もするとずいぶん慣れてきました。
そこまで仲良くなれたわけではありませんが、クラスメイトたちとも少しずつ会話できるようになってきました。
暮山、実は学生時代にヨーロッパに行ったとき、スーパーのレジ係のおばあちゃんから差別的な対応を受けたことがありまして。
そのときのトラウマで、アジア人以外の外国の人と接するときは少し身構えてしまうところがあります。
面と向かって
イエ◯ーモンキーはバナナでも食べてなさい!
なんて言われてしまったら、悲しくてしばらくバナナが食べられなくなりそうです。
クラスメイトの中にアジア人は暮山の他にタイ人の女の子が一人いるだけで、他はみんなアラブ人、ヨーロッパ人に南米人でした。
しかし、暮山が心配していたようなことを言ってくる人は誰もいません。
よかった…
これからもおいしくバナナが食べられそうだ…。
小心者の暮山はほっと胸をなでおろしながら、隣の席の美しすぎるアラブ人の女性(暮山と同い年・3人の子持ち)と宿題の話なんかをしてみるのでした。
暮山、分析する
英語教室に通い続けるにつれ、暮山はこう思うようになりました。
暮山、もしかしてこの中でトップクラスに成績が良い…?
慣れてきたせいで、調子に乗ってうぬぼれているのだと思われるかもしれませんが本当なのです。
授業中に出されるクイズも、期末評価に関わるテストも、宿題も。
文法も、英作文も、長文読解も。
先生からの評価やテストの点数は、スピーキング以外はいつも高得点です。
周りが外国の人だらけという、恵まれた環境で勉強できているために短期間で英語力が伸びたのかも、と思いましたが、教室に通い始めてまだ2〜3ヶ月しか経っていないことを考えると、原因はそればかりでもなさそうです。
考えた結果、暮山はひとつの結論を得ました。
それは
最初から誰よりも正確な英語を理解できていたのは、クラスで一番英会話ができない暮山である
というものです。
まるで一休さんのとんち話のようですね。
矛盾していて分かりにくいので、内容を整理してみました。
暮山の特徴
- 正確な中級レベルの英語をある程度理解している
- 英語を使って会話する経験に乏しく不慣れ
- 正確に話さなければという意識の強さから、考える時間が長め
- 発言時は手をあげる、ほかの人の話は最後まで聞く等のルールを遵守して発言・行動する
- 空気を読もうと努め、人にどう思われるかを気にするため、不要・不適切と判断した発言はしない
クラスメイトたちの特徴
(注:もちろんそれぞれ個性がありますが、暮山と比較した場合の全体としての傾向について記載します。)
- 中級レベルの英語を理解しているものの、やや正確さに欠ける
- 日常生活や仕事での経験上、もとから英会話に慣れている
- 正確な表現にとらわれずに思ったことをとにかく表現する
- ルール遵守にこだわらず、自分のやりたいように行動・発言する
- 空気を読むという文化があまりないこともあり、人の目を気にせず自由に発言する
- 人によってはスペイン語やフランス語等、英語と似た単語や文法をもつ言語が母国語という利点もあり
暮山は最初の頃、堂々と発言するクラスメイトたちに圧倒されてしまいましたが、決して英語スキルがみんなより低いわけではなかったのです。
英会話の経験値が低いことに加え、これまで日本人の中だけで生き、培ってきた考え方が他のクラスメイトとは全くちがうものだったために、別の行動を取っていただけなのです。
また、自分の考え方を基準にみんなの行動を見ていたため、自分とは全くちがう価値観やその行動の背景にあるものについては理解できていませんでした。
表面的なものだけを見ていた結果、暮山だけがみんなのレベルについていけないかのように錯覚していたのです。
(次回に続きます→ 英語と暮山④ )
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