-前回までのあらすじ-
少し前に中東某国内で引越しをした暮山夫妻。
日本に帰国していた暮山に代わり、引越し関連の手続きの一切は中東某国に残る夫が対応していたため、暮山が実際に新居を訪れたのは引越し前日であった。
新居は人気インフルエンサーが住んでいそうな豪邸だが、ふと窓の外を見ると、庭と呼ばれるはずの場所では荒れ果てた砂地にゴミが散乱するという地獄のような光景が繰り広げられていた。
あまりの事態に言葉を失う暮山。
そんな暮山とは対照的に、とりあえずゴミを除去してもらうべく管理事務所に電話をかける夫。
暮山はそこで過去を猛烈に悔いる。
そう、実は夫と物件リサーチの相談をした際、今目の前に広がる光景とほぼ同じ写真を見ていたにも関わらず、その時は渾身のツッコミをかますことなく言葉を飲み込んでしまったのである。
ひとり引越し作業を進めてくれていた夫への遠慮と、中東某国では決して抱いてはいけなかった感情・期待によって誤った判断をした暮山。
自身の判断ミスに今初めて気がついたものの、時すでに遅し。
暮山にはただ、しばらく呆然と夫の背中を見つめ続けることしかできないのであった。
(前回の記事はこちら→ 庭と暮山②:日本の非常識が常識⁉︎荒地が新築豪邸の庭 )
(「庭と暮山編」初回記事はこちら→ 庭と暮山①:自慢の豪邸?しかも理想の庭付き⁉︎ )

庭のゴミ、今日中に取り除いておいてくれることになったよ。
暮山が呆然としている間に、夫の電話は終わったようです。
声をかけられ我に返った暮山は、しばらくぶりに言葉を発しました。

・・・!
…ぁあ……ありがとう…
ゴミを捨てて行っチャウッテ…ひどい清掃業者だね…
…それにしても…ゴミはこれで解決ダケド…
この庭は…ナントか……シナイとね…
あまりの事態に脳の処理スピードが落ちてしまい、しゃべることすらままならない暮山。

まぁ、この国の業者はどれもそんなもんでしょ。
庭ひどいね。
家が落ち着いたら造園業者を探さないとだなー。
普段と変わらぬ様子で終始冷静な夫。
すでに内覧でこの状態の庭を直接見ていたせいもあるのでしょうが、夫は暮山以上にここ中東某国での暮らしに順応している様子です。
彼も日本生まれ・日本育ちのはずなのですが……柔軟性が高いというのは得がたい長所ですね。
うらやましい限りです。
もしかしたら、庭を入居前に整えてはもらえないということも、彼にとっては想定の範囲内だったのかもしれません。
そう思うと、ますますあの写真を見た時にツッコミを入れなかった自分が悔やまれます。
しかし引越しはもう翌日に迫っています。
新居の賃貸契約はとっくに済んでいるし、引越し前の家の契約期間は残り1週間ほどしかありません。
荷物はほとんど箱詰めし終わっているし、明日の朝には引越し屋さんがやってくるのです。
今さら

この家、思ってたんとチガウ(怒)!!!
などと言って暴れてもあとの祭り。
事前にツッコミも確認もできたのに、勝手な想像と期待でそれを怠った暮山が悪いのです。
そう思うと、ここでようやく現実に立ち向かう覚悟を決めることができました。
翌日は朝から引越し屋さんがやってきて、暮山夫妻は大忙しでした。
事前にもらった段ボールだけでは足りなかったため、追加で持ってきてもらった箱に入りきらなかった荷物を詰め込みつつ、都度引越し屋さんからの確認に答え、さらに同時進行で家の掃除を進めます。
荷物がすべて積み終わったのはお昼ごろ。
お昼休憩を取り、1時間後に作業を再開するという引越し屋さんとは一旦別れて、自家用車で新居に向かいます。
一足先に新居にたどり着いた暮山夫妻。
豪邸は前日となにも変わっていませんでした。
そう、なにも変わっていないのです。
庭の大量のゴミも昨日と同じ状態で放置されたまま。
どう見ても片付けされてはいない様子です。

・・・・・・ああ、そうだ。
ここは日本ジャナイ・・・中東某国ナンダ・・・
一度お願いしたらすぐ対応ナンテ、してもらえるワケナインダ。
なんにも期待しちゃあいけない・・・
ナンニモ・・・・・・
昨日覚悟を決めたはずなのに、またしても目の前の光景にショックを受けその処理スピードを落とす暮山の脳。
ふと横を見ると、夫は早くも管理事務所に電話をかけ、改めて庭のゴミの片付けをしてもらうよう依頼しているところでした。
相変わらずの柔軟性の高さ。
そして鋼のメンタル。
しかし感心している場合ではありません。
庭をめぐる暮山夫妻の苦悩は、まだ始まったばかりなのですから。
(次の記事はこちら→ 庭と暮山④:難航する海外での業者探し、ついに隣人に被害が⁉︎ )
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