-前回までのあらすじ-
これは少し前に暮山夫妻が中東某国内で引越しをしたときの話。
訳あって暮山が新居を実際に目にしたのは引越し前日になってから。
窓の外に広がるのは、内覧時の写真で事前に目にしたのと全く同じ状態の荒れ果てた砂地の庭。
引越し後はまず家の中を整え、2週間程度で生活が落ち着く。
そろそろこの庭をなんとかせねばと思った暮山は、造園業者を見つけようと奮闘し始めた。
しかしインターネットで見つけた造園業者も、マンションの警備員さんへの紹介依頼も、そしてマンションの管理事務所への問い合わせも、結局すべて今に至るまで折り返しの連絡は来ていない(2021年6月26日現在)。
中東某国での残りの人生は、この荒れ果てた庭の主として生きようかと考え始めた暮山。
そんなとき、いよいよあの男が動き出したのであった。
(前回の記事はこちら→ 庭と暮山⑤:ネットよりツテ⁉︎海外での業者の探し方とは )
(「庭と暮山編」初回記事はこちら→ 庭と暮山①:自慢の豪邸?しかも理想の庭付き⁉︎ )
「あの男」…。
彼はまたの名を「太平洋戦争で無念な死を遂げた旧日本兵の生まれ変わり」、そしてまたの名を「大きめの猫さん」と言います。
そう、あの男とはつまり、暮山の夫です。
(「大きめの猫さん」命名の由来についてはこちらの記事をご覧ください→ 猫と暮山⑤:暗闇でちんまり座る姿…猫もひとりぼっちは不安なの? )
夫は暮山に輪をかけて面倒くさがりな人間であることもあり、基本的に家のことはほぼ全て暮山任せです。
結婚当初…いや、お付き合いしている時からその姿勢は一貫しております。
旅行の計画と宿やレンタカー・飛行機等の予約、結婚前の互いの両親との6人での顔合わせアレンジ、結婚式のプランナーさんとの連絡、結婚式関連のちょっとした小物とムービー作りに細々とした諸手配、一緒に住み始めてからの家の設備関連の業者とのやり取り…。
暮山家ではこれらは基本的に暮山が担い、夫でなければ分からない部分のみをお願いしつつ、他は必要に応じて相談や報告を行い進める体制をしいております。
つまり、夫の基本スタイルは
『文句をつけずにお金を出すが、手は動かさぬ』
というものです。
(そういった意味で、今回の引越し関連手続きをすべて夫が担当したのは異例でした。)
また、夫は平日は毎日朝早く家を出て会社に行き、帰って来るのは日が沈んでからです。
従って、夫が荒れ果てた庭の姿を目にするのは週末のみ。
その間にも、暮山からはしばしば造園業者発見が難航しているとの報告が入ります。
その暮山がとうとう庭を荒れ地のまま放置しようと考え始めている。
事態の深刻さを感じ取り、さすがの夫もこのあたりで動くことにしたようです。
夫はさっそく、スマホで検索した造園業者にメッセージを送ったようでした。
ところがその返事が待てど暮らせど来ないのですよ…。
…と思っていたのですが、なんと数時間後、夫の元にお返事が来ました。

えっ…?
ドウイウコト・・・?
暮山ノ問合セ(ネット・直接依頼あわせて計4件)ニハヒトツタリトモオ返事ガ来ナイノニ・・・?
今までとは逆のショックを与えられ、またしても処理スピードが低下し始める暮山の脳。
いよいよ使い物にならなくなった暮山の脳をよそに、夫はサクサクと業者とのやり取りを進めます。

とりあえず次の土曜日にうちに来て庭を見たいって。
見積もりとかはその後に出してくれるみたい。

アア・・・ソウ。
ウン、分カッタ土曜日ネ。
あれほど奮闘したのに全く繋がらなかった造園業者と、なぜ夫が少し調べただけで繋がることができたのでしょう。
暮山の探し方が悪かったからと言ってしまえばそれまでですが、それにしてもこうまで違うものでしょうか。
この暮山家始まって以来の謎は、未だ解き明かされておりません。
造園業者の方は土曜日の朝10時に来るとおっしゃったそうです。
中東某国では約束の時間というのはあくまでも目安なので、暮山の経験上、実際に来る時間は10時半〜11時の間くらいと予想されます。
ところが次の土曜日、暮山の予想に反して朝10時ちょうどにインターフォンは鳴りました。
まさか…!!
と思いましたが、その「まさか」でした。
造園業者のおじさんはここ中東某国では大変めずらしい、時間をきちんと守る人だったのです。
週末だというのに夫はオンライン会議やら何やらで自室にこもっていました。
そこで、暮山がおじさんと一緒に庭に出てその様子を見てもらい、広いスペースには芝生を、小さなスペースにはサボテンなどを植えたいとの希望を話します。
おじさんはフムフムとうなずきつつメモを取り、おおまかな庭の大きさを確認し、見積もりと発注可能な植物の一覧は後ほど夫あてに送ってくれると言いました。
お互いに英語ネイティブではない上に発音に癖があるため、何度か聞き返したり同じことを繰り返し言いながらのコミュニケーションではありましたが、おじさんが非常にていねいで誠実な人であることはよく分かりました。
この人の会社であれば、安心してお任せできそうです。
帰っていくおじさんを見送る際、ふとドアにかけてあった虫コナーズが外の床に落ちているのが目に入りました。
おじさんは暮山に別れを告げ、ドアの外に脱いでおいた靴を履いているところだったので、今これをかけ直すのは少々気が引けます。
おじさんが去ったら、後でかけ直そう…。
そう思いつつ、この時はドアを閉めたのでした。
数時間後、ようやく床に落ちた虫コナーズのことを思い出した暮山。
玄関のドアを開けると、床に転がっていたはずの虫コナーズはこつぜんと姿を消していました。
そして、ドアの外側にそっとかけてあったのです。
きっと造園業者のおじさんが、靴を履き終わった後にかけて下さったのでしょう。
靴を履く時はこちらに背を向けていらしたはずなので、おじさんは最後にこちらを振り返って、しゃがみこんで虫コナーズを回収し、ドアにかけてくれたということになります。
荒っぽいサービスで定評のある中東某国の業者にも、こんなに細やかでよく気のつく方もいらっしゃるのだな…!
小さなことではありますが、「何も期待してはいけない」と己に言い聞かせねば耐えがたいようなことに立て続けに遭遇した後であっただけに、感動もひとしおでした。

見積もりは確認しなきゃだけど、おじさんのところにお願いしたい!
そっとドアの外にかけられた虫コナーズを見ながら、暮山は心に決めたのでした。
(次の記事はこちら→ 庭と暮山⑦:考えるべきは費用と労力!天然芝vs人工芝 )
(虫コナーズを手に入れたいきさつについてはこちらをご覧ください→ 暮山の敵たち⑤:蚊に悩まされて気づく日本製品の優秀さ )
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