前回のあらすじ
日本への帰国時、『すみません回送中です』とのバスのパネルを見て困惑する暮山。
バスに謝罪される覚えのない暮山が後日調べたところによると、あの言葉はバスを待ちわびるお客さんたちに向けてのものであって、暮山に向けられていたわけではないことが判明する。
その後中東某国に戻る暮山。
ここは謝罪の言葉などそもそもこの世に存在しないかのような世界であり、日本と同等のサービスの質など求めてはいけない世界でもある…。
暮山はつい苛立ちを覚えてしまい、ときにはバトルを繰り広げることもあるという。
(前回の記事はこちら→ 謝罪と暮山① )
バトル1:カフェ店員vs暮山
その日暮山は友人のソフィアやアンジェラ(※)とカフェにおりました。
ちょうどお昼どきだったので、何か食べようとそれぞれメニューを検討します。
(ソフィア&アンジェラ初回登場記事はこちら→美と暮山① )
暮山はハンバーガーにしようと心に決めていたのですが、ソフィアがどちらにしようかと決めかねていたランチプレートに一瞬で心変わりし、そちらをオーダーしました。
(ちなみにソフィアは迷っていた別の方を選びました。)
しばらくすると、オーダーを取った店員さんがお料理を運んできました。
暮山とアンジェラのお料理が先にやってきたようです。
しかし暮山、目の前に運ばれてきたお料理を見て一瞬固まりました。
…明らかに暮山がオーダーしたものではなさそう…?
暮山がオーダーしたお料理はメニューに写真はありませんでした。
しかし、メニュー名にはっきりとアジア風と書かれていたのを覚えています。
目の前のお料理はどこからどう見てもアジア風ではなさそうです。
確信は持てませんでしたが、勇気を出して店員さんに声をかけました。
暮山:すみません、これは私がオーダーしたお料理ではないと思うのですが…。
私が頼んだのはアジア風のランチプレートですよね…?
店員さん:いや、あなたはこの◯◯ランチプレート(=別のお料理)を頼みましたけど?
暮山:………!
やはり明らかに違うお料理でした。
だのになぜ、彼はこんなにも確信に満ちているのでしょうか。
なにゆえ確認もせずに自分の方が暮山より正しいと言い切れるのか。
そして絶対に間違っているのにこの自信は一体どこから……?
さらに、気のせいか店員さんの表情や態度は
何言っちゃってんのよ、この人?
とでも言い出しそうな、暮山の間違いを鼻で笑うような様子に見えます。
(そもそも暮山は間違ってはいないのですが。)
やけに姿勢が良くてなぜか胸を張っているように見えるのも、暮山の神経を逆なでしてきます。
(これは完全なる言いがかりですね。)
暮山のイライラスイッチがカチリと音を立てて入りました。
私は確実にアジア風ランチプレートを注文したのを覚えてます。
これは絶対にあなたの間違いですよ!
手違いなのだから、このお料理は食べられません。
下げて私のオーダーしたアジア風ランチプレートと交換してください!!!
感情的になるあまり、少々声が大きくなりわめくような形になってしまいました。
店員さんはそんな暮山を見て、表情を変えることなく、もちろん自分の間違いを詫びることもなく、ただ
「わかりました」
と言ってお料理を下げてくれました。
正直なところ、間違って運ばれてきたランチプレートをアジア風プレートの代わりに食べるのは全くいやではありませんでした。
十分に美味しそうでしたし、暮山は特にアレルギーがあるわけでもありません。
なによりせっかくのできたてのお料理を一口も手をつけずに捨てるなんて、本来であればそんなもったいないことはしたくないのです。
店員さんがもし
「すみません、こちらの手違いだったようですね。」
と言ってくれたら、お料理を交換しろなんて絶対に言わなかったと思います。
しかしイライラスイッチの入ってしまった暮山はジブリの名作のひとつ・風の谷のナウシカに登場する怒りに我を忘れた王蟲の群れのようなもの。
怒りに駆られて走り出したら、もう誰にも止められないのです。
店員さんがお料理を下げて去った後、暮山は我に帰りました。
図らずも友人たちに王蟲に豹変する姿を見られてしまった…しかも知り合ってまだ日の浅い外国の人たちに…。
なんだか怒ったらますますお腹が空いた……やっぱりさっきのお料理下げてくれって言わなきゃ良かったかもなぁ……。
それに、自分より立場の弱い店員さんに対してあんなに強く物を言うのって、暮山はいわゆるクレーマーなのかも…。
あれほど勢い良くわめいた暮山でしたが、所詮は小心者。
怒りが収まると、恥ずかしいやらお腹は空くやらでいたたまれない気持ちになりました。
王蟲になったと思ったら一人反省会を始める情緒不安定な暮山。
ソフィア:あれ、明らかにあの人が間違ってたよね。
私も凛が頼んだやつ良いかなって思ってたから、よく覚えてるもん!
アンジェラ:そうだね、店員さんの間違いだよね。
この国だとこういうこと多いよね。
心優しい友人たちは、怒ったり勝手に落ち込んだりと忙しい暮山を慰めてくれたのでした。
(次の記事はこちら→ 謝罪と暮山③ )
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